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誰でもこころに悩みを抱えることはあるでしょう。自然に悩みが消えてしまうこともあれば、友達や家族に相談することで解決することもあるかもしれません。しかし、こころの調子が崩れて、とても苦しかったり、日常生活に支障を来すようになってくる場合には、自分一人の力では解決が難しい場合も多いのです。
身体が調子を崩れると病気になることがあるように、こころの調子が崩れてしまうとこころの病気になることがあります。 こころの病気は決して珍しいものではありません。ストレスの多い現代社会では、誰がなってもおかしくはない病気のひとつです。特に思春期や青年期では、こころに悩みを抱えることが多く、こころの病気にとてもなりやすい時期なのです。
こころの病気には、精神症・精神病/サイコーシス(統合失調症など)、気分障害(うつ病、躁うつ病)、摂食障害(過食症、拒食症)、不安障害、解離性障害、パーソナリティ障害、アルコール・物質依存障害など様々な種類があります。どの障害であっても、できるだけ早期に適切な治療を受けることで、早くに病気が軽くなったり、病気を治すことができると考えられています。
こころの病気は、治療によって回復するのです。
精神症(精神病)とは、英語のpsychosis(サイコーシス)の日本語訳です。ここでは精神症という日本語訳、あるいはサイコーシスというカタカナ表記を採用することにします。また、必要に応じて精神病という訳語も併記することにします。
精神症(サイコーシス)では、頭の中で考えていることや体験していることと現実との区別が出来なくなってしまったり、現実には起こっていないことを体験したり、現実とは違う考え方を信じたり、現実に合わせた言動や行動が難しくなってしまいます。例えば、聞こえないはずの人の声がはっきりと聞こえてきたり、まったく関係のない人が自分の噂をしていると信じたり、何かの組織に追われたり、迫害されるという考えにとらわれたり、言動や行動が場にそぐわなくなり、まとまらなくなってしまうなどの症状が現れることがあります。
精神症(サイコーシス)の多くは一過性のもので、精神症(精神病)エピソードと呼ばれる、始まりと終わりのある一定の期間に症状が出てきます。精神症エピソードをきたす精神障害には、統合失調症、統合失調様障害、統合失調感情障害、妄想性障害、短期精神病性障害、精神病性の特徴を伴ううつ病や躁うつ病、特定不能の精神病性障害などが含まれます。およそ100人に3人ほどが生涯に1度は精神症のエピソードを経験することがあると考えられており、これに似た症状はさらに多くの人が経験することがあります。
精神症(サイコーシス)の状態では、現実とうまくつきあうことが難しくなるので、仕事や勉強、交友関係など日常生活を送るうえで支障が出てきます。また、気分が非常に高揚したり、落ち込んだり、極端な浮き沈みを経験することもあります。物忘れが多くなったり、注意力が散漫になったり、不眠や独り言の症状が出てくることもあります。なかには、死にたいという気持ちが強まったり、感情や行動をコントロールできなくなってしまうこともあります。
精神症(サイコーシス)は治療によって治る病気です。精神症エピソードを経験した人のほとんどは、適切な治療を受けることで、困難な状態から抜け出すことができます。このためには、できるだけ病気が軽い早期のうちに治療を開始することが重要です。精神症(サイコーシス)かもしれないと思った場合には、早めに専門家に相談しましょう!
精神症(サイコーシス)の代表的な障害が、統合失調症です。精神症エピソードやその後遺症などが6ヶ月以上続くような場合には、統合失調症という診断名がつけられます。世界のどこの国であっても、およそ100人に1人がかかるといわれており、決して特殊な病気ではありません。
統合失調症の原因は、今のところ明確には分かっていません。これまでの研究からは、遺伝やストレスなど何かひとつの原因で統合失調症になることはないと考えられています。むしろ、誰しもがなる可能性がある病気で、人と比べるとストレスを受けやすかったり、ストレスにうまく対処できなかったりすることで、精神症エピソードが起きてしまうのだと考えられています。
精神症エピソードの状態では、脳の神経の働きの調和が乱れてしまい、脳内に存在する神経伝達物質の一部が多くなりすぎたり、少なくなりすぎたりすると考えられています。このために、外から受け取る情報と脳の中の情報とがうまく整理されず混乱してしまい、その結果、幻覚や妄想などの症状が出やすくなると考えられています。
統合失調症で起こる精神症エピソードは、「前駆期」「急性期」「休息期」「回復期」の4つのステージに分けることができます。
「前駆期」では、下記にあるような様々な症状が出てくることがあります。これらの症状は、精神症エピソードが明らかになる前に、前兆として出てきます。ただし、前駆期で出てくる症状は、他の精神障害で起こることもあり、必ずしもその後に精神症エピソードに発展するわけではありません。しかし、こうした症状が出てきたときには、こころの病気の危険サインとして注意をする必要があるのです。これらの症状を初めて経験する場合には、こころのリスク状態の可能性があります。
< 前駆期に出てくる症状の例 >
「急性期」では、精神症(サイコーシス)の症状が明らかとなります。幻聴や被害妄想が出てきたり、行動や言動がまとまらなくなり、自分でコントロールすることが困難になってきます。この状態では、できるだけ早く専門的な治療を受ける必要があります。早期に適切な治療を受けることで、症状の回復は早まり、その後の経過もより良好になると考えられています。
「休息期」では、精神症(サイコーシス)の症状は軽くなり、すっかり消失することもあります。ただし、やる気が出てこなかったり、落ち込みやすかったり、疲れやすかったりするのがこの時期の特徴です。こうした症状は、前駆期や急性期での疲れや消耗のために起こっているので、回復期に向けて休息を中心とした生活を送る必要があります。
「回復期」は、回復に向けて徐々によくなっていることが実感できる時期です。ただし、回復のスピードには個人差があります。その人の抱えているストレスや問題にも左右されますし、症状の具合にも左右されます。焦らずゆっくりと、周囲の人と相談しながら前に進んでいくことで、よりよい回復が得られるでしょう。
統合失調症の経過は様々で、ひとりひとり大きく異なります。精神症エピソードを1度しか経験しない人もいれば、何度か繰り返す人もいます。エピソードの後に、すっかり回復する人もいれば、何らかの症状が持続する人もいます。仕事に普通に就いたり、結婚して子供のいる人もいれば、障害が残り福祉的な支援を受けながら暮らしている人もいます。経過はさまざまですが、ひとつ言えるのは、統合失調症になったことで人生がすべて決まるということは決してないということです。どんな人にも色々な可能性があるのです。統合失調症は回復するこころの病気です。
こころの病気には、病気の種類や時期に応じた治療法があります。専門家からの適切な診断を受けた上で、その方に合った治療法を選択して行うことが重要です。こころの病気の治療では、ひとりひとりに合わせた、オーダーメイド型の治療が特に大事です。